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なぜ運動をすることがゲームのプレイスキル向上に繋がるのか

はじめに

当記事では、ApexLegendsやVALORANTなどのFPS(一人称視点シューター)ゲームにおけるプレイヤースキルと、神経細胞の成長を調節するBDNF(脳由来神経栄養因子)の関連性について、公開された論文や私の仮説を交えた内容を記載します。

記事の流れ

  1. BDNFとは何者か
  2. BDNFを増加させるには
  3. BDNFとプレイヤースキルの関連
  4. 運動を、ルーティンに

脳由来神経栄養因子(BDNF)とは

神経細胞の成長やシナプスの機能促進に関わるタンパク質です。
というと難しく聞こえてしまいますが、物事を学習するために必要な基盤を用意する者です。

昨今は認知症予防の鍵としてBDNFの名前が挙がることが多いです。
それは”記憶”、”認知”、”気分・気力”においてBDNFが大きな役割を果たしていることが理由と思います。
また、脳機能だけでなく、”糖・脂質の代謝”、”食欲の抑制(過食予防)"、といった幅広い機能に影響を及ぼす存在です。

では、脳内BDNFが増加している場合と、減少している場合ではどのような違いが生まれてくるのでしょうか。
下記はマウスによる実験結果から得られたデータです。

機能名 BDNFが増加 BDNFが減少
記憶力 向上する 低下する
気力・気分 向上する 低下する
糖・脂質代謝 インスリン感受性の改善 肥満・過食
食欲 抑制される 過食気味となる

参照元: KINTORE: 「脳機能を高める分泌性タンパク質、脳由来神経栄養因子:BDNF」環境が制御する道具としての、気力と記憶

表は参照元の一部ですが、BDNFは様々な変化を誘発し、量によって変化の度合いも変わってくるようです。
私の調査不足かもしれませんが、ヒトで実験を行った際の脳内BDNFに関わる科学的エビデンスは存在しないため、マウスを使った実験の結果からヒトにも似た作用があるのではないかと期待されています。

運動がBDNFの増加を促す

ひとつめは、体を動かすことです。
もっと言うならば、ジョギング・サイクリング(エアロバイク)・水泳などの有酸素運動
最大心拍数の70%程度を維持すること30分程度行うのが良いとされています。

最大心拍数の70%は一般的に有酸素運動として分類され、70%を超える場合は無酸素運動として分類されます。
逆に60%前後は軽い運動に分類され、もっとも脂肪燃焼に向いている心拍数です。
最大心拍数を算出する式は、220 - 自分の年齢 = 最大心拍数 となり、
仮に自分が30歳とした場合は、220 - 30 = 190 となり、190 * 0.7 = 133回/分 になります。

脂肪燃焼が効率的に行われる範囲(ファットバーンゾーン)は「ちょっときつい」と感じる「最大心拍数×40~60%」が望ましいとされています。

引用元:
心拍数を意識した有酸素運動で、効率よく脂肪燃焼 | POWER PRODUCTION MAGAZINE(パワープロダクションマガジン)

30分程度行う点については、60分を超えるような長時間の有酸素運動は身体的・精神的に強いストレスとなり、
体格も心肺機能も個人差があるために、自分にとって最適な運動時間を探る必要があると私は思います。

適度な食事制限がBDNFの増加に効果がある

ふたつめは、空腹時間を意図的に作り出すことです。
間欠的断食(intermitting-fasting)とも呼ばれている手法で、12時間~16時間程度の断食を行います。
そして空腹を検知した体はBDNFを作り出し始めます。

Fasting also increases levels of a brain hormone called brain-derived neurotrophic factor (BDNF). A BDNF deficiency has been implicated in depression and various other brain problems.

Deepl翻訳:

断食はまた、脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれる脳内ホルモンのレベルを高めます。BDNFの欠乏は、うつ病やその他のさまざまな脳の問題に関係していると言われています。

引用元: 10 Intermittent Fasting Benefits: Weight Loss, Cell Repair & More

食事制限(適度な空腹時間の導入)によって脳内BDNFが増加する

引用元: KINTORE: 「脳機能を高める分泌性タンパク質、脳由来神経栄養因子:BDNF」環境が制御する道具としての、気力と記憶

運動や空腹状態によるBDNF増加は人間に備わった機能か?

狩猟や採集をして暮らしていた大昔は、現代のような移動手段や道順をナビゲートしてくれるようなものはありません。
生きるためには動物を仕留めにいかなければ、または採集を行わなければ、そのために長い距離の移動や道端の危険を記憶する必要があったのだと私は推測しています。
そのように考えると、空腹になりながらも体を動かすことで脳機能が向上していくのも納得しやすいです。

すなわち、太古の昔、哺乳類は、生き延びるための栄養が不足するような環境において、身体活動が食事量を上回ることが刺激となり、脳内(前頭葉、または、脳皮質)のBDNFが増加することで、脳機能(記憶力、および、気力)が高まり、その結果、遠くまでの狩猟活動が可能となり、また、視床下部のBDNFの増加によって食欲が抑えられ、身体がよりスリムになることで、より軽快で効率的な身体活動ができるようになったと考えられる。

引用元: CiNii 論文 -  「脳機能を高める分泌性タンパク質、脳由来神経栄養因子:BDNF」環境が制御する道具としての、気力と記憶

BDNFによる脳機能向上がプレイヤースキル向上の助けになる

ようやくここでゲーム内のプレイヤースキルと繋げていきます。
スキルを向上させる、つまり自分の体の動かし方を学習し意識せずともできるようになることと定義した場合、必然的に脳のあらゆる機能を駆使することに繋がります。自転車の乗り方を覚えようとするためにペダルを漕ぐこと、バランスを取ること、ある程度のスピードが無ければ安定しないことなど、多くの情報を感覚として捉えて記憶します。それらと同じようにプレイヤースキルも、情報を新しく学習することになります。

スキルアップを狙うゲーマーのルーティンに運動を組み込む

運動を行うことでBDNF(脳由来神経栄養因子)の増加を促し、新たな学習基盤を築く。その上でゲーム内の新たな戦略やとっさの状況判断とやエイミング技能の向上を目的としたトレーニングを行うことで、運動量が不足していた人たちにはポジティブな成果が期待できると思います。
日々、運動を行っている人たちはそのまま継続することで、さらなる成果が得られると私は考えます。

おわりに

何かを新しく学ぶことに遅い時期は無い。そういった言葉がよく聞こえてきます。私もそう思います。
昨今の研究で成人後でも脳機能を向上させていくことができる実験結果があるように、ヒトとしてさらに良いコンディションに仕上げていくための方法が今後出てくると思っています。私はそういった情報を自分の好きな分野に応用できれば、本当に嬉しいです。
そして、私自身が検体となってデータを示しながら紹介した情報が参考になればまた、嬉しいです。